国内商品先物取引の税金(確定申告)に関して

国内商品先物取引の税制について、個人の場合と法人の場合それぞれをご紹介します。

個人の場合

確定申告について

個人事業主の方などとは異なり、会社員や主婦の方の中には、「確定申告なんてしたことがなく、関係ないんじゃない?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、会社員や主婦の方でも商品先物取引を行っているなら話は別です。

株式の場合は、「特定口座」という制度があり、特定口座で源泉徴収「あり」を選択している場合は、利益に対して一律20.315%が源泉徴収されますので、基本的にお客様が自分で確定申告をする必要はありません。
※ただし、損失が出た方で繰越控除を受けようとする場合には、確定申告する必要があります。

しかしながら、商品先物取引には、「特定口座」がありませんので、一定以上の利益が出ている場合には、誰でも確定申告が必要になります。

  • 差金決済による年間の損益がプラス
  • 課税対象
  • 利益に対して20.315%の納税義務
  • 差金決済による年間の損益がマイナス
  • 非課税対象
    但し、確定申告をしておくことで、翌年以降繰越控除を受けることが可能

課税方式(申告分離課税。一律20%の税率)

国内商品先物取引の差金決済(※)を行ったことにより年間の損益を通算して利益となった場合、その利益に対して税率20%(所得税15%、住民税5%)が「申告分離課税」により課税されます。この場合には、確定申告による納税義務が生じます。なお、受渡しによる決済は対象となりません。

※差金決済とは、現物の受渡しを行わず、反対売買(買ったものは売る、売ったものは買い戻すこと)による差額の授受で決済することをいいます。

復興特別所得税について

2013年から2037年まで(25年間)の各年分の所得税の額に2.1%を乗じた金額が、復興特別所得税として追加的に課税されます。詳細についてはこちらをご参照下さい。

主な金融商品の税金概要

商品先物取引以外の金融商品の税金については、以下の通りです。金融商品によって、バラつきがあるのがわかります。

商品名 所得の種類 課税方式 税率
株式関連 株式(売却益) 譲渡所得 申告分離課税 20%
株式(配当) 配当所得 源泉分離課税 20%
投資信託 ETF(売却益) 譲渡所得 申告分離課税 20%
ETF(配当) 配当所得 源泉分離課税 20%
外貨関連 外貨預金(利息) 利子所得 源泉分離課税 20%
外貨預金(為替差益) 雑所得 総合課税 15%~50%
先物・FX等 商品先物(売買益) 雑所得 申告分離課税 20%
日経225先物(売買益) 雑所得 申告分離課税 20%
FX取引(売買益) 雑所得 申告分離課税 20%
債券関連 利付債(利息) 利子所得 源泉分離課税 20%
利付債(売却益) 非課税 - -
利付債(償還益) 雑所得 総合課税 15%~50%

商品先物取引で出た利益には未決済のものは含まれない。

「商品先物取引で出た利益」とは、差金等決済し、確定した売買差益のことを言います。未決済の含み益は課税対象にはなりません。

【具体例1】

国内金先物を9,700円で10枚買い建玉
2023年12月29日日中取引終了時点の金価格9,800円(含み益100万円発生)
買い建玉を売仕切せず、そのまま来年に持ち越しする場合。

  • 尚、2022年12月30日16:30~2023年12月29日15:15まで(以下、「2023年内」とします。)の実現損益は0円と仮定します。

⇒年末時点で100万円の含み益が発生しておりますが、買い建玉を売仕切していない為、2023年内の実現損益は0円なので、確定申告の必要はありません。

【具体例2】

国内金先物を9,700円で10枚買い建玉
2023年12月29日日中取引終了時点、金価格9,600円(含み損100万円発生)
買い建玉を売仕切せず、そのまま来年に持ち越しする場合。

  • 尚、2023年内にこれまでの実現益が100万円発生していたと仮定します。

⇒2023年内に発生した実現益が100万円。年末時点での含み損が100万円発生しておりますが、含み損は実現益と相殺されない為、実現益100万円が課税対象となります。

【具体例3】

国内金先物を9,600円で10枚買い建玉 同9,800円で10枚売り建玉
その後、9,700円で売り建玉のみ買仕切(実現益100万円発生、買い玉は未決済)
2023年12月29日日中取引終了時点、金価格9,400円(買い玉の含み損200万円発生)
買い建玉を売仕切せず、そのまま来年に持ち越しする場合。

  • 尚、9,800円の売り建玉を買仕切するまで、2023年内の実現損益は0円と仮定します。

⇒売り建玉を買仕切した際に発生した実現益100万円に対しては申告が必要となり、2023年の課税対象になります。一方、12月29日の日中立会終了時点で発生している買い玉の含み損200万円は、2023年内の控除の対象とはならず、翌年以降に買い玉を損切りした場合、その年内での損金としてみなされます。このため、両建ての売り玉を買仕切したことによって発生した実現益に対して納税義務が発生します。


  • 実際に確定申告をする際は「商品先物取引に関する調書」で1年間の損益を確認し、そこから経費を差し引いた金額が所得金額となります。商品先物取引の経費とは売買にかかる委託手数料と、有料セミナー受講料や書籍代などその取引に直接要した経費が該当します。
  • 経費の範囲には具体的な定めがないため、実際に申請する際には管轄の税務署などに経費に該当するか否かを確認することをお勧めいたします。
  • 同一商品・同一限月の売りと買い双方の建玉を行った場合(いわゆる両建)、価格変動リスクは固定または限定されることになりますが、売りと買い双方の建玉に手数料が掛かるなど経済的合理性に欠ける面もございますので、 リスクを十分にご理解頂いた上で、お客様ご自身の判断で行って頂きますようお願い致します。 尚、上記は便宜上両建てのケースで説明しておりますが、弊社で両建を推奨するものではありません。

損失の繰越控除

年間で通算して損失となった場合には、確定申告の義務はございませんが、申告を行うことにより、損失の金額を翌年以降3年間にわたって商品先物取引による所得の金額から繰越控除することができます。
(損失となった年以降、繰越期間中は連続して確定申告書を提出することが必要となります。)

■ 繰越控除の例

損失の繰越控除
年数 損益 解説
1年目 -40万円 年間では損失となり、所得はなかったこととなります。納税のための申告は不要ですが、翌年以降に損失を繰り越して控除を受けるためには、損失の確定申告を提出しなければなりません。
2年目 -70万円 1年目に同じ。
3年目 +30万円 1年目の損失のうち30万円を控除できます。その結果課税所得はゼロとなります。
4年目 ±0 取引なし(繰越控除の適用を受けるためには、毎年連続して確定申告書を提出する必要があります。)
5年目 +110万円 2年目の損失70万円を繰り越して110万円から控除することができます。(1年目の損失のうちまだ繰越控除していないものが10万円残っていますが、既に3年経過してしまっているのでこの10万円については繰越控除することができません。)その結果、当年の課税所得は40万円となり、税率は20%ですから、納税額は8万円となります。

互いに損益通算することができるデリバティブ取引について

損益通算ができる取引は、以下の通りです。

①国内の金融商品取引所並びに商品取引所における商品先物取引、商品指数等先物取引、商品先物オプション取引
(例:金標準、金ミニ、白金標準、白金ミニ、ガソリン、原油、ゴム、一般大豆、とうもろこし、コメ等)
②国内の金融商品取引所における有価証券先物取引、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引
(例:日経225先物取引、同オプション取引等)
③国内の金融取引所における金利先物取引、外国為替証拠金取引(FX取引)、カバードワラント
(例:くりっく365、ユーロ円3カ月金利先物等)
④店頭商品デリバティブ取引(金、石油、穀物等の商品を原資産とする取引)、店頭金融商品デリバティブ取引(通貨、金利、有価証券等の金融商品を原資産とする取引)、店頭カバードワラント(金融商品等を原資産とするオプションを証券化した取引)
(例:商品CFD取引、店頭証券CFD取引、店頭FX取引)

上記の所得以外の所得(例えば、株式の現物・信用取引、商品ファンド、外国の商品取引所の先物取引などによる所得)との損益通算はできません。

「デリバティブ取引」とは、商品・金融・有価証券を原資産とする取引所デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引をいいます。

法人の場合

法人が行った商品先物取引の損益は、次により法人税が課されます。

差金決済による損益

商品先物取引の差金決済を行ったことによる損益は、当該差金決済を行った日の属する事業年度の益金又は損金に算入します。商品先物取引の売付け・買付け、転売・買戻しに係る委託手数料及びその他の費用の額は、その支払を行った日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。

期末において未決済の商品先物取引に係る利益相当額・損失相当額

期末において決済されていない取引については、期末時点で決済を行ったものとみなされ、そこで発生する利益相当額又は損失相当額は、その事業年度の益金又は損金に算入されます。この場合、利益相当額又は損失相当額は、事業年度終了日における取引所の最終価格等で決済したこととして計算される差金に基づく額となります。また、期末に計上された利益相当額又は損失相当額は、翌期首において戻入れ処理が行われます。

ヘッジ会計を利用している場合の繰延ヘッジ利益・損失

企業がヘッジ目的でデリバティブ取引を利用した場合、デリバティブ取引は時価評価されるのに対し、ヘッジ対象である資産・負債は原価評価される場合があります。このような損益認識時点のずれを一致させようとする会計手法を「ヘッジ会計(繰延ヘッジ会計)」といいます。

会計上、繰延ヘッジ会計が認められる場合は、原則として税法上も同様の取扱いが認められており、繰り延べた金額は損金・益金として計上されません。

その他

税金についてよく頂くお問い合わせについて

国内の商品先物取引の税金について多く頂いているお問い合わせについては、「よくあるご質問」にまとめておりますのでご参照下さい。

よくあるご質問へ

日本商品先物振興協会

日本商品先物振興協会のホームページでも、税金に関してわかりやすく解説されておりますのでご参照下さい。

商品デリバティブ取引に関する税金
税制Q&A