インフレが継続する中、金・原油と比べた出遅れ感に注目!
先ずご覧になっていただきたいのは、史上最高値更新で市場の話題となっている国内金、そしてプラッツドバイ原油、国内トウモロコシの2017年から現在までのチャートです。
新型コロナウィルスのパンデミックを受けて、2020年2月終盤に起きた「コロナショック」から世界経済の悪化を食い止めることを目的に実施された世界的な金融緩和策等により世界経済は回復へと向かいました。
この「コロナショック」からの回復過程で、経済活動の正常化に伴い膨大な需要が喚起されたことで、2020年4月以降、エネルギー、貴金属、非鉄金属、穀物などの国際商品が軒並み値上がりしました。更にロシアによるウクライナ侵攻を受けて物価高が加速したため、2021年後半から世界的なインフレの時代に突入しております。
世界的なインフレ高進により、国際商品の代表格である金、原油、穀物は2020年中盤から騰勢を強め、国内金やプラッツドバイ原油は一時的な調整安を挟みながら今現在も騰勢を維持しているのに対して、国内トウモロコシ価格は2022年5月に高値を付けたあとは1年以上下落が続いており、両銘柄に比べると出遅れ感が顕著となっていることが見て取れます。
現在、インフレはピークから比べると鎮静化に向かっているようですが、未だ世界的に高インフレ状態が続いていることから、投機資金は今後も国際商品へ流れ続けることが予想されます。
しかし、投機資金はやみくもに国際商品へ流れる訳ではありません。現在のファンダメンタルズ等を考えると、金や原油への投機資金の流入はこの後も続く可能性がありますが、ファンドなど投機筋の投資戦略としては、金や原油などの上昇により膨らんだ資金を、他の国際商品に比べて出遅れ感があり、かつファンダメンタルズも良好で先行きの上昇余地が大きいとみられるものに資金を移してくることが予想されます。
その中で、トウモロコシは主に飼料用としての需要が多いことから、現代の世界の食卓にとって非常に重要な役割を担っております。まして、現在の世界的な異常気象やウクライナ情勢の泥沼化、米中対立の深刻化などトウモロコシの供給面を脅かす材料も多いため、現在需給緩和観測などから2022年5月高値からは大きく水準を切り下げておりますが、今後きっかけ次第では金や原油以上に大化けする可能性を秘めている商品といえるのではないでしょうか。
9月12日 米農務省発表の需給報告 生産高は米国史上2番目の大きさとなる見込み
米コーン期末在庫、予想外の上方修正
米農務省が9月12日に発表した農産物需給報告で、2023-24年度の米国産トウモロコシの期末在庫を22億2100万ブッシェルと、前月の22億0200万ブッシェルから僅かながら上方修正し、市場予想の21億4000万ブッシェルを上回りました。
また、2023-24年度の米国産トウモロコシの作付面積と収穫面積をそれぞれ前月から80万エーカー上方修正する一方で、需要面では飼料、食品その他、エタノール副産物、輸出高がそれぞれ据え置かれ、これにより期末在庫は1900万ブッシェル前月から引き上げられました。
今回の需給報告を見ると、この後収穫期において余程の天候異変などが起こらなければ、今年度産の米トウモロコシは過去2番目の豊作になることがほぼ確実となっております。
潤沢な供給に伴う世界的な需給緩和観測が今後のシカゴコーン相場の重石となりそうですが、一方で過去のデータを見ると必ずしも豊作の年に需給相場期に向けて下落し続けるという事もありません。
知ったらしまい、噂で売って事実で買う!
過去の豊作の年の値動きを見ると、天候相場期に豊作を織り込んですでに大きく下落していることが多いため、豊作がある程度確定した場合、逆に材料出尽くしで反発するケースも見られます。
まして今現在、世界的に高インフレが続いている状況の中で、これからスタートする南米の生育が不順となったり、ウクライナ情勢が悪化した場合、一気に需給が引き締まることも予想されます。さらに安値示現により需要が喚起される可能性があるほか、世界有数の需要国である中国は足元では景気回復は遅れているものの、先行きに関しては需要増加が見込まれていることなどから、豊作を織り込んで付けた現水準から過度な弱気は禁物といえそうです。
ロシアによる「穀物輸出合意」離脱で食料危機を引き起こすか?
ウクライナ産穀物の流通の要となっていた黒海は事実上封鎖
ロシアは2022年2月にウクライナに侵攻して以降、クリミア半島周辺でウクライナ軍と激しい交戦を続けており、これまでウクライナ産穀物の流通の要となっていた黒海は現在事実上封鎖された状況にあります。
ウクライナは世界有数の穀物生産国でありトウモロコシおよび小麦の生産量は共に世界6位のシェアを誇ります。輸出ルートである黒海からの積み出しが出来なくなれば、世界の穀物供給に深刻な影響を及ぼすとされており、とりわけアフリカ地域など、途上国の食糧危機に発展しかねないとの懸念が高まります。
このため、トルコと国連が仲介役となり、2022年7月にウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する「穀物輸出合意」がなされ、ロシアは武装していない船の航行を保証することになりました。こうした合意は、これまで3回の延長を経てウクライナ産穀物の輸出は円滑に行われておりましたが、2023年7月17日にロシア側が自国の利益を満たしていないとして「穀物輸出合意」の離脱を宣言し、以降、ウクライナ産穀物の供給が滞る形となりました。その後、9月4日にロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が「穀物輸出合意」の再開について協議を行いましたが、具体的な進展は見られませんでした。
ウクライナへの侵攻以降、ロシアは西側諸国からの厳しい経済制裁により国内経済が低迷しており、「穀物輸出合意」離脱を政治利用することで経済制裁の緩和に繋げたいとの思惑もありそうです。実際に、トルコのエルドアン大統領は会談後、ロシアが「穀物輸出合意」再開の為に二つの要求があったことを明らかにしております。
そのうちの1つは、ロシア農業銀行の「国際銀行間通信協会(SWIFT)」への再接続を条件に挙げております。ロシアは2022年3月12日から米欧西側諸国の経済制裁措置により金融決済システムであるSWIFTから排除されており、ロシア産穀物輸出に掛かる売却代金の決済が困難な状況にあります。SWIFT排除はロシアにとって経済的に大きな悪影響を及ぼしていることから、「穀物輸出合意」再開を交渉のカードにして経済制裁の緩和を取り付ける狙いがあるようです。
もう一つの条件は、欧州の港への穀物輸送に使われる船舶に対する保険を挙げております。穀物を輸送する船舶には欧州や他の港に搬入する際に保険に加入する必要があるものの、現在は制裁措置により保険会社がロシア船舶に保険の提供を停止しており、貿易の障害になっております。
ウクライナとの軍事衝突が激しさを増す中、ロシアが要求する条件を米欧西側諸国が承諾する可能性は低いとみられ、今後も交渉は難航することが想定されます。そうした中、代替ルートとしてウクライナとルーマニアを隔てるドナウ川沿いの港からの輸送が注目を集めておりましたが、今月に入りロシア軍がドナウ川流域にある穀物の輸出拠点への攻撃を激化させるなど穀物輸出の妨害を強化しており、ウクライナ産穀物の安定供給には困難な状況が続きそうです。
投機資金の流入によって大相場へ発展の可能性も!?
このように、ロシアとウクライナの対立など外部要因に目を向けてみると、過去2番目の豊作が見込まれている米国産トウモロコシですが、供給面では決して安心できる状況にはないといえそうです。
仮に黒海からのウクライナ産穀物の供給が今後も滞り、世界的に供給が逼迫した場合、その影響はウクライナ産以外の穀物価格の上昇に繋がるとみられ、今後のシカゴコーンや国内コーンの価格にも大きな影響を及ぼす可能性が考えられます。
また、需要面ではサウジアラビアやロシアといった有力産油国による原油の自主減産が年末まで継続することが決定しており、原油相場は年末に向けての先高観が強いため、将来的な需給逼迫懸念による原油高⇒代替エネルギーとしてのエタノールの需要増加⇒トウモロコシ高へとつながる可能性も十分ありそうです。
きっかけ次第では60000円を試すか!?
現在、金や原油が騰勢を維持しているのに対して、需給緩和観測などにより2022年4月高値59600円から大きく値を崩している国内トウモロコシですが、上記の要因を背景に投機資金が金や原油からシフトして大相場へ発展する可能性も否定できないのではないでしょうか。
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