〜2018年7月19日更新〜

WTI原油・プラッツドバイ原油共に目先上値抵抗を示している

WTI原油は、米国のイラン核合意離脱などを材料に、2018年5月7日に2014年11月以来となる1バレル=70ドルの大台を回復しました。その後、一旦調整を挟みましたが、7月初旬に掛けて再び買われ、同年7月3日には75.27ドルまで上昇しました。

一方、プラッツドバイ原油※も海外原油高に連れて値を上げ、2018年5月16日に1kl=5万円台を回復。同年5月23日には1kl=52,190円、同年7月11日には51,880円を付けるなど、これまで原油市場は騰勢を強めて参りました。
しかし、急ピッチの上昇に対する高値警戒感が強まる中、同年6月22日に開催されたOPEC総会では、トランプ米大統領の意向も踏まえ増産決定がなされました。また、米中通商問題などが圧迫要因となり、7月中旬以降高値圏は維持しながらも、目先上値抵抗を示しております。

WTI原油月足チャート

プラッツドバイ原油月足チャート

 

現在、市場では強弱材料がひしめき合う中で、今後の方向性を探る動きが続いております、そんな中、今後の原油相場の重要なカギを握っているのがトランプ米大統領と言えそうです。

※プラッツドバイ原油=東京商品取引所に上場されている、ドバイ原油の価格を指標とする中東産原油

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〜トランプ米大統領がカギを握る〜

今後の原油相場の動向を予測するうえで重要なポイントとしては、

  • ・OPEC加盟国、非OPEC加盟国の生産量及び政策

  • ・米国の対イラン経済制裁

  • ・米中通商問題

  • ・ベネズエラやリビアなど、主要生産国の供給動向

などが挙げられますが、「米国のイランやベネズエラに対する経済制裁」「米中通商問題」は米トランプ政権が深く関わっております。この為、これらの問題が沈静化に向うのか更に悪化するのかは、トランプ米大統領の采配に掛かっているとも言えます。

現在、高値圏を維持しながらも上値抵抗を示している原油相場。上記のポイントを中心に今後の動向を探ってみましょう。

OPEC総会で減産枠の縮小が決定 それでも止まらない原油価格の高騰

2017年6月21日に1バレル=42.05ドルの安値を付けたWTI原油は、その後1年以上に渡り上昇トレンドを維持してきました。その背景には、OPECと非OPEC加盟国の協調減産が根底にあります。

WTI月足チャート

今年5月下旬にOPECが協調減産枠の縮小に傾くまでは、2018年末以降も協調減産が継続されるとの期待が原油価格の下支え要因となり、これまでの原油価格の上昇に繋がってきました。

しかし、今年5月にトランプ大統領が、ベネズエラやイランに対して制裁発動方針を発表したため原油高が加速。更に供給懸念の強まりから、米国など世界的にガソリン価格の急騰を招いた事にトランプ大統領が懸念を示し、その意向を踏まえOPEC、非OPEC加盟国が減産枠の縮小に動き、6月22日のOPEC総会で増産が決定したのです。この様に、OPECなど主要産油国はこれまでの協調減産から増産へと舵を切り直しております。

一方、OPEC、非OPEC加盟国の増産決定にも拘わらず、原油相場が7月中旬現在に於いても高値圏を維持しているのは、イランやベネズエラに対する経済制裁発動を受けた、世界的な供給不安が解消されていない事が原因と考えられます。

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米国のイラン制裁 発動期限は2段階 制裁発動が及ぼす今後の影響

トランプ米大統領は2018年5月8日、中東諸国に対する攻撃的な介入と過去の核開発に関する虚偽報告を理由に、イランと主要6カ国による核合意からの離脱を決定し、イランに対する経済制裁の再発動を発表しております。

制裁内容は、イランとの新たな契約締結は即時禁止され、現在イラン企業とビジネス契約を結んでいる企業や個人に対しては、90日と180日の二段階の期限が設定されました。この期限内に各企業等は、イランの中央銀行と金融セクター、石油産業などを対象とする制裁措置に従わなければなりません。

 
米国による対イラン制裁
猶予期間90日
(期限は8月6日)
  • ・イラン政府によるドルの購入・取得
  • ・イランとの金など貴金属の取引
  • ・イラン製の敷物と食品の米国への輸入および特定の関連する金融取引
  • ・グラファイト(黒鉛)、原材料および半製品の金属、石炭、産業用ソフトウエアでのイランとの直接および間接的な販売、供給、取引
  • 猶予期間180日
    (期限は11月4日)
  • ・イランのエネルギーセクター、保険および引受サービス
  • ・2016年1月時点で米国の作成したブラックリストに記載されていた個人
  • ・イラン中央銀行など2012年に米議会から指定を受けたイランの金融機関との外国金融機関の取引
  • ・イラン産の石油や石油製品、石油化学製品の購入を含む石油関連取引。イラン国営石油などの企業やイランの海運および造船セクターとの取引
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    先ずは、8月6日までにイラン国債ないし同国通貨の保有を段階的に縮小しなければならず、これに従わなければ米国から制裁が科されます。その他、イランの貴金属や鉄鋼などの貿易や、同国の自動車業界への制裁が8月6日に再開されます。

    次に11月4日に、イランの石油業界とビジネスを行っている企業や個人への制裁が再開され、これにはイラン中銀と取引を行っている外国金融機関への制裁も含まれます。更に、イランのエネルギー業界へも制裁を科すほか、イラン国営石油(NIOC)などの企業との石油関連取引も制裁の対象となります。

    この様に、今回発動する制裁は幅広い範囲で、イランと取引する企業や個人に対して非常に厳しい内容となっております。

    産油国ランキング

    イランはOPEC加盟国ではサウジアラビア、イラクに次ぐ産油量を誇り、5月時点では日量約382万バレルと世界第7位の産油国となりますが、米国主導の経済制裁が発動されれば同国の産油量が急激に落ち込むことは避けられそうもありません。

    実際に制裁が発動された場合、イラン産原油は日量80〜200万バレル程度市場から消失する可能性があると言われております。


    イラン国内では反米保守強硬派が台頭 核開発再開を警告

    一方的に核合意を破棄されて、原油の禁輸を中心とした経済制裁を科せられたイラン側も黙ってはおりません。

    中東地政学的リスクイメージ図

    イランのロウハニ大統領は、米国の制裁復活で同国経済へのメリットが失われれば、核開発を再開すると警告しております。また、アメリカによる核合意の離脱は、ロウハ二大統領をはじめとした穏健派を厳しい立場へと追い込む形となり、今後、同国内の反米保守強硬派の台頭により、核合意を破棄するよう圧力を強める動きが加速する懸念が高まっております。


    仮にイランが核合意を破棄し、再び核開発に着手した場合は、敵対するサウジアラビアも「すぐに後を追う」意向を示しており、中東地域での核拡散観測による地政学的リスクが一気に高まり、原油相場上昇へと繋がる可能性があります。

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    〜サウジアラビア増産でイランとの対立がさらに激化〜

    トランプ米大統領は、11月の米中間選挙を控えて有権者からの不満が強いガソリン高を避ける為、原油価格高騰を抑えるよう産油国に増産を求めております。6月末には、対イラン政策で共闘するサウジアラビアのサルマン国王と電話会談を行い、同国に最大200万バレルの増産を迫っております。

    制裁によるイラン産原油の減少分を、サウジアラビアの増産によって埋めようとする思惑ですが、これに対しイラン側も反発を更に強め、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡封鎖の可能性を示唆しております。ペルシャ湾とアラビア海とを結ぶホルムズ海峡が実際に封鎖される事態となれば、原油に依存するサウジアラビアにとっても死活問題となる為、両国の軍事的な緊張が高まる可能性があります。

    また、サウジアラビアがトランプ米大統領の要請通り、最大200万バレルの増産を実施した場合、OPECの生産遵守枠を上回ることになり、協調体制そのものが崩壊する可能性も否定出来ません。そうなれば、これまで原油価格安定でまとまってきた産油国の結束が揺らぐ事になり、盟主であるサウジアラビアのOPEC内での信用は失墜する可能性があります。また、実際に生産量を余剰生産能力の最大まで引き上げてしまうと、他の産油国の減産など不測の事態に備える対応枠を失う事になり、 緊急時におけるいわば保険が無い状況となる為、世界的な原油の供給懸念が再度浮上する可能性も考えられます。

    原油価格高騰へ

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    米中貿易戦争が激化 地政学リスクを高める火種は中国にも

    現在、米国と中国の貿易摩擦の問題がマーケットの波乱要因になっており、原油もその影響を多大に受けております。米中間の報復的な制裁関税の掛け合いにより、世界1、2位の経済大国の景気が鈍化し、需要が大幅減少するとの思惑などから、同問題に対して原油相場も非常に敏感になっております。
    米国は今年中間選挙があるので、トランプ大統領としてもあまり同問題をこじらせたくはない筈ですが、現状に於いては中国に対しても強気の姿勢を崩しておらず、今後の両国の動向が、原油市場の下振れ要因として警戒されております。

    一方、米国の対イラン経済制裁については、中国はイランと友好国でありイラン産原油の最大輸入国でもあります。そのため、トランプ米大統領によるイラン原油の輸入禁止要請には、現在の貿易摩擦の問題もあって拒否する構えを示しております。イランが中国への原油輸出を続けると外貨獲得に繋がり、核開発の資金源を確保する事となる懸念や、周辺地域の武装勢力へ資金を提供しているとされる懸念も残るため、中国のイラン原油輸入継続は、地政学リスクを高める一因となる可能性もあります。

    イランの主な輸出先とその割合

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    ベネズエラの産油量が減少傾向 サウジアラビアの増産で考えられるリスク

    イラン問題や米中通商問題以外にも、主要産油国の供給動向がマーケットに強い影響を与えます。
    原油埋蔵量世界1位のベネズエラの産油量は、2016年で約224万バレル、2017年で約197万バレルと経済状況の悪化により急激に落ち込んでおり、2018年5月時点では約136万バレルと今なお、減少傾向にあります。更に、米国の経済制裁が続いた場合、一段と生産量が減少する可能性があります。

    ベネズエラの産油量推移

    また、ベネズエラの他にもリビアやナイジェリアなど、原油生産等に関わるインフラ整備が不十分なうえ、政治的に不安定な国が原油の主要生産国となっている事から、これらの国の供給不安が偶然重なり、複合的に原油相場の上昇要因となる事も多々ありますので、こういった国の情勢にも十分注意を払わなければなりません。

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    WTI原油90ドル プラッツドバイ原油62000円を目指すか!?

    このように現在の原油市場では、OPECや非OPEC加盟国の増産決定や米中通商問題などの弱材料と、イラン問題やベネズエラの供給不安といった強材料が交錯しており、強弱材料の綱引きにより目先方向感を探る動きが続いております。

    11月の米中間選挙での勝利の為にも、トランプ大統領は今後も原油価格の上昇が続く様だと、ガソリン価格上昇を抑える為に市場に対して様々な圧力を掛けて来る可能性があります。その中でも最終的な切り札として、戦略石油備蓄(SPR)の取り崩しを検討していると伝えられております。

    仮に戦略石油備蓄(SPR)が市場に放出された場合、原油市場は一時的に鎮静化する可能性がありますが、それを万一実行するとしても今の価格帯ではないと考えます。
    今後、WTI原油が90ドルを超え、100ドルへと迫る様な価格高騰が発生した場合には、戦略石油備蓄(SPR)の市場放出が実施される可能性も高まると考えます。ただ、その時点に於いては、危機的な供給懸念に陥っている状況が予想され、この政策を実施しても簡単には価格をコントロールできない状況にあると推察されます。

    7月に入り、いくつかの弱材料の出現にも拘わらず、大きな値崩れには至っていない背景には、今後、米国の対イラン制裁発動により同国の産油量及び輸出量が減少し、イランの報復等により地政学リスクが更に高まるのではとの見方があり、それが現実化された場合、世界的な供給懸念から一段と原油の騰勢が強まると同時に、新たな投機資金が流入し価格高騰を招くシナリオも想定されます。

    現在マーケットでは、70ドル近辺で値下がりを見込んだ投機筋のショートポジションが増加傾向にありますが、仮に年初来高値である75ドル近辺を明確に上抜けした場合、投機筋の買いにショートカバー(買い戻し)も加わり、新たな上昇トレンドへと発展する可能性があります。その場合、 WTI原油で1バレル=90ドル突破、プラッツドバイ原油で1kl=65,000円に向けた上昇への可能性が一段と高まると考えます。

    プラッツドバイ原油とWTI原油の価格推移

    ヒストリカルチャート長期

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